虚弱高齢者における口腔ケアアンケート

保険医協会という医科歯科合同の団体があり、当医院も入会しています。その団体の新聞に記載があったアンケート調査について報告します。
このアンケートは愛知県の内科の先生が調べられたものですが、訪問診療している１００名の介護者に自記入式のアンケートを行いました。
結果は、平均年齢８２．５歳、女性が７０％嚥下機能に影響のある脳血管疾患、認知症はそれぞれ３０％。介護度は２が最頻度であるが、介護度４，５の方もそれぞれ２０％ありました。要介護の高い患者は、歯磨き回数も少なく、口腔内症状が多い、さらには訪問歯科治療を受けない傾向があるようです。そこで、要介護が重い方には重点的に訪問歯科診療を勧めるべき余地が大きいと結論づけていました。
このような報告を最近目にすることが多くなってきていますが　歯科ではなく内科の先生が報告されていることに、関心したと同時に歯科医としてこういった報告が、できてなかったことに情けないと思いました。
訪問診療を勧めるようにケアマネと懇親会を、持とうという試みも歯科医師会で行いますが、こういった説得力ある資料を持ち合わせて会に臨まなければならないと思います。
萩のケアマネさんたちは、すごく勉強されて口腔ケアに関しても、知識は豊富です。歯科医師もしっかり勉強して、お話ししないと、説得力の無いものになりかねませんね。

ついに、ここまで来たか！「歯あわせ健口隊ステップアップ研修会」

萩市では、歯科医師会の先生方が各地域にある高齢者のサロン（お年寄りの方々の集い）に出かけて、口腔ケアの講話、口腔体操の普及などを行ってきました。昨年、この各地のサロンのまとめ役をされている方たち（サロンリーダー）に、口腔体操をはじめとする口腔ケアの研修会を、行い「歯あわせ健口隊」として、研修を受けた方々に認定証を渡しました。その「歯あわせ健口隊」の方々の第２回研修会を開催しました。
今回は、栄養士さんにご協力いただき、高齢者にやさしい調理教室を行いました。
皆さん手際がよくて、またすばらしい企画と参加者のノリもよくて、いい研修会になりました。栄養士さんも、的確な指導をしていただきました。同じ食材でも、少し工夫することで高齢者にやさしい食事ができることがわかりました。また、ただ柔らかくすること、刻むことが高齢者にやさしいわけではなく、それなりの歯ごたえを残してあげることも大切なことがわかりました。私たちは８５歳まで生きると、実に９万３０００回食事をします。しかし、その最後では流動食や介護食また口から食事ができなくなったりします。嫌いなものを無意識に避けたり、食べるたびにむせたり、熱がでたりしてる方も少なくはありません。機能を高めること、調理方法を少し変えてみることで食事がとりやすくなり、機能低下に抗うことができたら・・・。という願いが実現する第１歩が踏み出せたのではないでしょうか？
着実な歩みをみせている萩の行政、社協、栄養士さん、そして歯科医師会がおこなっている「歯あわせ健口」事業は本当にチームワークの賜物ですね！がんばって市民のみなさんに広めていきたいものですね。
参加された方、みなさんに感謝します。ほんとうに、ありがとうございました。

高齢者と肺炎、そして口腔ケア

「入れ歯の調子が悪くて・・。」とご高齢の紳士が来院されました。きちんとされていて、本当に身なりのしっかりとされている方です。入れ歯を拝見。かみ合わせに若干の問題がありそうです。「昨年義歯を作ってから調子が・・。」
下の義歯は、顎堤（がくてい、歯茎の土手のこと）も吸収しており、入れ歯ののっかる部分はありません。
難しいな！せめて噛みこんだときだけでも、入れ歯が動くのを防ごうと思いました。かみ合わせを調整してみました。
まだ、数本歯が残ってますが歯周病です。この少ない歯は、歯科医院の方でクリーニングしてなるべく長く保存しようと思いました。若い衛生士さんの話も、よく聞いてくださり、入れ歯も、残った歯の清掃方法も一生懸命聞いてくださいました。
「少し調子がよさそうなので、これで食べてみましょう。歯ブラシは、どれがいいですか？」と、
［あまりこだわらなくても・・」と思ったのですが、熱心なので圧倒されました。
いくつになっても、やはり健康（健口）でいたいのですね。数本の歯をいたわるように大切にしょうという気持ちでいっぱいでした。
「ありがとうございました。」と、さわやかな声であいさつとともにその日はお帰りになりました。
高齢者だから、簡単でいいというわけではなく、できる人には、こちらも熱心に指導すべきですね。
少し反省するとともに、勉強になりました。

だが、数日後、肺炎で入院されたと連絡をいただきました。「これからだったのに・・・。」と私は思いましたし、ご家族も全く同じ気持ちでした。口腔ケアをすれば高齢者の肺炎の４０％を減少できるし、肺炎による死亡率の５０％減少することができるという報告があります。
その後、風の便りで、亡くなったっことを聞きました。非常に残念でした。
さらにその後に、ご家族の方とお話しすることができました。ご家族の方は「私がついていながら・・」とお話しされましたが・・・。
今までがんばったじゃないですか。９３歳まで本当によくお世話されたと思います。
亡くなられたおじいちゃんも、きっと天国で感謝されていることだと思います。
御苦労さまでした。
そして、私も、またひとつ勉強させていただきました。

最後の一口まで、自分の口で，おいしく食事をとりたい！

萩市歯科医師会のホームページhttp://www.hagidental.or.jp/index.htmlに口腔ケア委員会の文章が紹介されましたので、お知らせします。

私たちの住んでいる萩市は、風光明媚なところとして知られています。また、さまざまな食材にもめぐまれています。しかし、人口は毎年減少する上に、高齢化率は増加しています。２００８年１０月では高齢化率３０％を超えています。しかも、旧郡部だと４０％を超えているのです。高齢者が増えるということは、介護を必要とする人が増加してきます。その中でも、お口の機能の低下は、なかなか気がつかないうちに起こっています。 最近、食事のとき、むせるようになったとか、ときどき熱が出ることが多くなったとか、食べ物の好みが変わったとかというようなことが、知らず知らずのうちに起こってきています。年をとると、活動量も減り、その結果機能障害が起こってきます。使わないことによる弊害が、少なからずあるのです。 私たち歯科医師会は、平成１８年度の介護保険の改正を機に、萩市、社会福祉協議会とともに、まだまだお元気な高齢者の方たちに、口腔機能の向上のための、さまざまなプログラムを組み機能低下防止に努めてまいりました。本当に、私たちの仕事の効果が上がっているのかを検索する目的で、約９０名程度の高齢者の方々に協力いただき簡単な調査も行いました。 結果は、私たちが予想しているよりも、はるかに上回る効果が得られました。一番効を奏したのは、「しあわせ健口体操」でした。こんなに簡単なことを、毎日することで、機能の向上が見られるのです。動かすことは、すばらしいことです。この体操をすることで、入れ歯に悩んでいた方が、うまく使えるようになった例もあるようです。もう、あきらめていた「たくあん」が、食べられるようになり、家族が驚いた！。という、こぼれ話もありました。私たちは、今後、予防活動に限らず、要介護の方々の口腔ケアを広めていくこと、さらには、豊富な食材をいかした、他では食べられない介護食の開発をして、世界で一番高齢者が幸せに食事ができる街を目指したいと思います。萩だから、できるのですよ！！ 萩市歯科医師会・口腔ケア委員会

口腔ケアシンポジウムを開催しました。

３月１５日萩市民館にて、萩歯科医師会、阿武歯科医師会、社会福祉協議会、萩市で、口腔ケア市民シンポジウム「歯あわせ健口の集い」を行いました。内容は、私たち歯科医師会の公衆衛生委員会のメンバーが地域の高齢者サロンに出かけ、口腔ケアに関する出前講話を行い、さらに口腔体操を実行していただくような地域での組織作りをした３年間の活動内容を市民にご披露しました。また、歯科衛生士による唾液テスト、口腔体操の体験、栄養士さんによる高齢者にやさしい、簡単にできる食事の試食コーナーも設けました。
会場は、大入り満員（３００人以上）で、高齢者の方々の感心が高いことが伺えました。私たちの調べでは、介護を受けてないお元気な高齢者の方々でも、お口の機能は３０％（１０人に３人）の方に機能低下が認められること。しかし、口腔体操などお口を動かすことをすれば、３ヶ月程度で１０％程度に減少することがわかりました。
この結果は、すごく意味のあることだと思います。もっと市民のみなさんにお伝えできればと思います。
当日参加された市民の皆様、実行に携わった皆様、そして、貴重なご意見をいただいた、山口県立大学の坂本先生、山口県歯科医師会の弘中理事に、感謝します。