いいことばかりじゃない! [診療日誌]

先日、ある急性期病院に訪問診療しました。現在全粥ですが、入れ歯が、全く合わないので製作を希望されました。今の食事ではむせはないし、誤嚥性肺炎を疑わせる症状ないし、「義歯がよくなれば、もっと食事形態のUPができるかもしれませんね。」と私。
無事に型を採ることができて、入れ歯の製作にとりかかりました。そして、患者さんは、ある病院に転院されていましたので、そちらに入れ歯を合わせに行ったのですが・・・。
出てきた看護師さんは・・。「あぁ~、○○さんね!」と、患者さんのところへ・・。「○○さん!歯医者さんが来とるよ!」とお休みの患者さんを起こしました。え~、うそだろ!顔色がおかしい。酸素飽和度は89%!!!
「おいおい、起こすとやばいよ!」ふと見上げると「絶食中」のプレートが・・。そして点滴中。
「なんで、絶食なんだ!ついこの前までは食べてたのに・・」
「いやね、食べさせたらむせるんですよね!」
「前の病院からの申し送りはないの!?」「食事形態とかかいてあるでしょう?」
「私は、把握してませんね~。知りませんよ~。」
「○○さん歯医者さんが、入れ歯作りにきとるよ~~。」
「もう、ええから、寝かせてあげてください。保湿剤おいてくから、口腔乾燥だけでも防いであげてください。」と
持ってる保湿剤をあるだけ置いて帰りました。何にもできなかった。情けなかった。
それから、何日かして、患者さんは亡くなりました。元の病気が悪化したのかも知れないし、誰も責めるつもりはありません。何か、悔しい気持にさせられるのは私だけではないでしょう。
何年ぶりに新しい入れ歯をつくり食べるところ見せてほしかったですね。待っていたおじいちゃんの顔が忘れられません。
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ハワイの佐和子です

とても悲しい話ですね。自分の力で口から物が食べれなくなるなんて
生きてる価値が半減します。食欲は人間の3大欲求の一つだから!
おじいちゃんが新しい入れ歯を試す事なく亡くなられた事は悲しい現実だけど病院まで届けたという親切心はきっと彼に伝わったと思いますよ!落ち込まないで下さいね。
by ハワイの佐和子です (2009-11-12 02:18) 

HAWAIIのまゆみ

のぶきさんの、思いや気持ちはきっと愛ですね。
どんな状態になっても、人間は愛で支えられると思います。
人の為に、一日一つ何かが出来れば、笑顔でいられれば
そんな人が溢れれば、介護や医学、教育、すべては変わってくると思います。あきらめないで、悔しさをばねにして、コツコツ前を向いて行きましょう!その情熱を大切にしてお互い頑張りましょう。
by HAWAIIのまゆみ (2009-11-12 03:17) 

ベッキーの嫁

とっても悲しくなりました。
絶食中のプレートがぶら下がった病室にいた亡き父のことを思い出して涙がでました。
父は病気が悪くなる前に幸い歯の治療をしていたので(MTM、私の中では最高齢症例です!)義歯のお世話にはならずにすみましたが、口腔ケアに関しては父自身がいつも病院の体制に対して疑問をなげかけていました。

今はまだ介護や口腔ケアという文字を見ると父を思い出してつらくなるので無理ですが、いつか私も勉強しないといけない分野だと思っています。
by ベッキーの嫁 (2009-11-14 00:58) 

なんちゃん

みなさんコメントありがとうございます。
介護にかかわると、本当にうれしいことや、本当に悲しいことに遭遇します。
国の政策や役人が、とか看護師が、医者が、歯医者が、ケアマネが、とかいろいろ言ううべきこと改善すべきことはたくさんあるのですが、けっこうみんな現場では、頑張っているのを感じます。
ただ、健常の人のように、うまいシナリオが書けない・・。
ベッキーさんのお嫁さんへ
あなたのような方が、現場では必要です。ひとりひとりを、お父さんと思って接してあげると、お父さんも喜んでくれると思いますよ。きっと!
by なんちゃん (2009-11-14 11:35) 

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