モナリザ [診療日誌]

「モナリザ」は、あのレオナルドダビンチによって描かれた傑作です。
フランスのルーブル美術館へ行けば、彼女に会うことができます。
でも、日本から行くのは、時間とお金が必要でなかなか会うことはできません。

今から、数十年前、日本にこのモナリザが来るというので、田舎の高校の美術教師が
東京へ出かけて行きました。
さすがの「モナリザ」です。日本中の人が彼女に会いにやってきてました。
彼は、美術館の入口で、念願の「モナリザ」を前にして、入館するのを逡巡します。

「はたして、こんなに沢山の人がいる中で、モナリザの美しさを鑑賞できるのだろうか?」

彼は、滞在中美術館の前で、何度も悩みました。
そして最後の日に彼は意を決して、入館しました。

「モナリザ」に、やっと会えたけど、会場は満員の人でゾロゾロと行列の中で、ほんの
わずかな時間、それも、動きながらしか観ることができなかったと、彼はやっと会えた喜びと、
残念な気持ちが入り混じったお話をされました。

数十年前、私が高校生だったころ、美術の教師をされていた村上先生のお話です。
高校生のころは、どの教師も受験向けの授業ばかりで、つまらなかったのですが・・・。
村上先生の授業は、本当に楽しかった。今でも、このお話は昨日のことのように
おぼえています。

やがて、私が開業してから、先生は患者さんとしてお見えになりました。
「モナリザ」のお話をしたら、懐かしそうに目を細めてらっしゃいました。

晩年に個展を開かれた時に、お邪魔させていただきました。
先生の描かれた絵画は、とてもすばらしく、絵葉書にもなっています。

診療のお昼休みに、その絵葉書を持参して、サインをしていただきに
お宅に伺ったことがあります。お家にあげていただき、お茶を飲みながら
しばらく絵の話をしました。
やはり「モナリザ」をゆっくり観たかったとお話しされました。

先生は、もう何年も前にこの世を去られました。
楽しい会話ができる患者さんが来院されなくなるのは
ほんとうに寂しいですね。
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徳さん

最近はこの年になると(74さい)同僚や先輩の訃報が多くて寂しい限りです。また我々より若いものもかなり亡くなられますので寂しい限りです。
その一方100歳の先輩が元気に「乾杯」の音頭を取る会合もあり励みになることもあります。
by 徳さん (2012-06-07 19:58) 

ハワイの佐和子

とっても癒されるお話ですね。ウルンときました。
忙しい現代社会です、人間にとっては、こんなホッコリする
お話や時間がとっても大切なんですよね。
by ハワイの佐和子 (2012-06-08 01:10) 

やまぐちのてっちゃん

美学美術史を勉強している一学徒としても、レオナルドのモナリザは永遠の憧れです。美術の制作に携わっておられた方だけに憧れの作品を目の前にしてもゆっくり鑑賞できなかったのはさぞ心残りだったでしょうね
by やまぐちのてっちゃん (2012-06-12 12:16) 

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